和歌ブログ [Japanese Waka]

国文系大学院生がひたすら和歌への愛を語る記録

恋歌(Love)-片思い(Unrequited Love)

恋の和歌 好きだけど、その人についてまだなにも知らない ― まだしらぬ人をはじめて恋ふるかな思ふ心よ道しるべせよ

その人について、まだ何もしらない。どんな人なのか、どうしたら会えるのか、わからない。好きだけれど、手がかりがない。手がかりがないけれど、あなたに伝えたくて、会いたくて、あなたが好きだというこの思いだけがあなたとわたしをつないでいる、という…

恋の和歌 心、恋、ばらばらに ― きみ恋ふる心は千々にくだくれどひとつもうせぬものにぞありける

あまりに好きで、好きで心が壊れそうで、壊れて散ってなくなってしまったら忘れられるかと思ったのに、ただのひとつもなくなってくれずにわたしを苦しめ続ける。 もう心はとうに壊れているのです。壊れてしまって、そのばらばらになった心のかけらをじっと見…

恋の和歌 ああよくあることだよねー笑 っていわれる温度差 ― 言へば世のつねのこととや人は見む我はたぐひもあらじと思ふを

言へば世のつねのこととや人は見む我はたぐひもあらじと思ふを (重之女集・恋廿首・89) 現代語訳 (あの人が好きですと)言葉にすれば、どこにでもある恋だと人は見るでしょうか。私にとっては何ものにも代えがたいただひとつの恋だと思っておりますのに。…

恋の和歌 A君はBさんが好きでBさんはC君が好きでどうにもならない ― 我を思ふ人をおもはぬむくいにや我が思ふ人の我をおもはぬ

我を思ふ人を思はぬむくいにや我が思ふ人の我をおもはぬ (古今集・雑体・俳諧歌・題しらず・読人知らず・1041) 現代語訳 私を愛してくれた人を(私が)愛さない報いなのだろうか、私の愛している人が私を愛してくれない(のは)。 内容解説 何という三角関…

恋の和歌 雨のしずくが落ちるように、あなたを思い続けています ― 雨やまぬ軒の玉水かずしらず恋しき事のまさるころかな

人につかはしける雨やまぬ軒の玉水かずしらず恋しき事のまさるころかな (後撰和歌集・恋一・平兼盛/男性・578・10世紀) 現代語訳 (思いを寄せている)女性に贈った歌雨がやまない(日の、私の家の)軒先から宝石のように透きとおった雨水が数えきれない…

恋の和歌 一瞬の、君 ― 朝影にあが身はなりぬ玉かぎるほのかに見えて去にし子ゆゑに

朝影にあが身はなりぬ玉かぎるほのかに見えて去にし子ゆゑに (万葉集・巻第十一・正述心緒・2394・8世紀) 現代語訳 朝方の(薄く弱々しい)影のように、わたしの身は(やつれて細く)なってしまいました。ほのかに(私の目の前に)現れてそのまま去って行…

恋の和歌 あなたの影になりたい ― 恋すればわが身は影となりにけりさりとて人に添はぬものゆゑ

恋すればわが身は影となりにけりさりとて人に添はぬものゆゑ (古今和歌集・恋歌一・題しらず・読人しらず・528・10世紀) 現代語訳 (あなたに)恋をしたせいで、私は影のように(やせ細って弱々しく)なってしまいました。だからといって(影のように)あ…