春歌(Spring)
春のあしたといふ事をひらけそふ木ずゑの花に露みえて音せぬ雨のそそく朝あけ (風雅集・春歌・進子内親王/女性・198) 現代語訳 次々と開いて数が増えてゆく梢の桜に(ちいさな)露が見えて(いると思ったら、そうではなくて)音もたてない(やわらかな)…
夕花を花のうへにしばしうつろふ夕づく日いるともなしに影きえにけり (風雅集・春歌・永福門院/女性・199) 現代語訳 (夕方の光に照らされた)花の上にしばし揺らぎとどまる夕日(を見つめていたら)、いつ沈んだともわからないうちにふっと消えてしまい…
時のまもえやは目かれむ桜花うつろふ山の春のあけぼの (為家集・春・藤原為家/男性・140) 朝見花さしのぼる日影をそへて紅の色にうつろふ花ざくらかな (為家集・春・藤原為家/男性・163) 現代語訳 ほんの一瞬でも目を離すようなことができるだろうか(…
百首歌たてまつりし春歌山たかみ嶺のあらしに散る花の月に天霧るあけがたの空(新古今集・春歌下・二条院讃岐/女性・130・12世紀) 現代語訳 百首の歌を詠んで献上した時に詠んだうちの、春の歌山が高いので(風は)嶺をかけめぐる嵐(のよう)に(吹き荒れ…
春のころしのぶる事ある女のもとにつかはしけるおもひあまりそなたの空をながむればかすみをわけて春雨ぞふる (長秋詠藻・藤原俊成/男性・328) 現代語訳 春のころ、秘密の恋人である女性のもとに贈った(歌)(あなたを恋しいと)思う気持ちのあまりにあ…
真木の戸をあけて夜深き梅が香に春のねざめをとふ人もがな (続拾遺集・春上・題しらず・藻璧門院少将/女性・48・13世紀) 現代語訳 (ある春の晩にふと目が覚めて、何かに誘われるように外に出ようと)戸を開けると、そこはまっくらな夜の中、一面の梅の香…
若草花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春を見せばや (壬二集・六百番歌合・藤原家隆・304・12世紀) 現代語訳 若草(を詠んだ歌)(まだ花が咲かない春が来ないと)待っているだろう人に、山里に積った雪のあいだにわずかに芽吹いた若草にも春は来てい…
何もせで花を見つつぞ暮らしつる今日をし春のかぎりと思へば (躬恒集・屏風・凡河内躬恒/男性・407・9世紀) 現代語訳 何もせず(ただ)花だけを見て過ごしています。今日がこの春の最後の一日だと思えばこそ。 内容解説 そして、躬恒に戻る。いいなあ。「…
花のうたあまたよみ侍りける時仏にはさくらの花をたてまつれわがのちの世を人とぶらはば (千載集・雑歌・西行/男性・1067・12世紀) 現代語訳 花の歌をたくさん読みましたとき(に詠んだ歌)(わたしが死んだら、)仏となった私に桜の花を供えてほしい。わ…
落花のこころをよみ侍りけるはかなさを恨みもはてじさくら花うき世はたれも心ならねば (千載集・雑歌・覚性法親王/男性・1053・12世紀) 現代語訳 落花(を思う)心を詠みました(歌)(散る花の)はかなさを恨み続けることはするまい。桜の花よ。憂き世は…
ながらへて生けらばのちの春とだに契らぬさきに花の散りぬる (新後撰集・雑歌・後深草院弁内侍/女性・1252・13世紀) 現代語訳 (私がこの命を)ながらえて生き続けることができたならば、また次の春に(きっとお逢いしましょう)と、せめてそれだけで も…
五十の御賀すぎてまたの年の春、鳥羽殿のさくらの盛りに、 御前の花を御覧じて、よませ給うける心あらばにほひを添へよさくら花のちの春をばいつか見るべき (千載集・雑歌・鳥羽院/男性・1052・12世紀) 現代語訳 五十歳の祝賀を行った次の年の春、離宮の…
The retired emperor composed this waka when he saw a fully bloomed sakura-flower at his Imperial villa in the spring of the year after his 50th birthday ceremony. Kokoroaraba nioiwosoeyo sakurabana nochinoharuwoba itsukamirubeki. (The Senz…
なほ折りて見にこそゆかめ花の色香散りなむのちは何にかはせん (躬恒集・屏風・凡河内躬恒/男性・420・9世紀) English(英語で読む) 現代語訳 やはり(桜の枝を)折って見に行こう。(どれほど美しく咲いていても)花の色と香りは、散ってしまったとした…
Naoorite minikosoyukame hananoiroka chirinannochiwa naninikawasen. (Mitune-collection・Byobu (a holding screen), Ōshikōchi no Mitsune (male), 420, 9C) Japanese(日本語) Translation into modern Japanese Well, let have a piece (of the sakur…
桜花咲ける尾上は遠くともゆかむかぎりはなほゆきて見む (躬恒集・屏風・凡河内躬恒/男性・415・9世紀) 現代語訳 桜の花が咲いている山の頂は(どれほど)遠くとも、行きうる限りはやはり(桜を見に)行って見たいよ。 内容解説 春と言えば桜だ、というの…
Sakurabana sakeruonoewa tohkutomo yukamukagiriwa naoyukitemin (Mitune-collection・Byobu (a holding screen), Ōshikōchi no Mitsune (male), 415, 9C) Japanese(日本語) Translation into modern Japanese Even though the place where Sakura has bl…
水のほとりに梅花咲けりけるをよめる 年をへて花の鏡となる水は散りかかるをや曇るといふらむ (古今集・春歌・伊勢/女性・44・9世紀) English(英語で読む) 現代語訳 水のほとりに梅の花が咲いていたのを詠んだ(歌)ながいあいだ梅の花を映し続けて花の…
Composing a Waka by watching a Ume-flower beside a pond. Toshiwohete hananokagamito narumizuwa chirikakaruwoya kumorutoiuran. (¨Kokin Waka syuu (Collection of Ancients and Modern Poems)¨, Spring poem, by Ise, 44,9c) 日本語(Japanese) Transl…
春風にしたゆく波の数みえて残るともなきうす氷かな (壬二集・六百番歌合・春氷・藤原家隆/男性・303・12世紀) English(英語で読む) 現代語訳 春風に(吹かれて氷の)下をゆく波の数が見え(るほどに透きとおっ)て、残るともなく消え残っている薄氷である…
Harukazeni sitayukunamino kazumiete nokorutomonaki usugoorikana. (¨Minisyuu¨, The six hundreds poetry contest, Harukoori (Spring ice), by Fujiwara no Ietaka/male, 303, 12C ) 日本語(Japanese) Translation into modern Japanese A number of rip…
雪を詠む梅の花降りおほふ雪を包み持ち君に見せむと取れば消につつ (万葉集・春雑・作者不明・1833・8世紀) English(英語で読む) 現代語訳 雪を詠んだ(歌)白梅の花―(ゆっくりと)降りつもり、(梅の花を)やさしく覆うその雪を私のてのひらに包んで、…
Composing a Waka for the theme “snow”. Umenohana furioouyukiwo tutumimotchi kiminimisemuto torebakenitutu. (The Man'yōshū (Collection of Ten Thousand Leaves), Spring/other, Unknown author, 1833, 8C ) 日本語(Japanese) Translation into moder…
百首歌たてまつりし時、春の歌山ふかみ春ともしらぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水 (新古今集・春歌・式子内親王・3・12世紀) English(英語で読む) 現代語訳 百首歌を献上した時、春の歌(という題でよみました歌)山が深い(ために雪の多く積った所に…
A spring poem, for when a hundred poems was presented to the retired emperor Gotoba. Yamafukami Harutomoshiranu matsunotoni taedaekakaru yukinotamamizu. (“Shin Kokin Waka syuu (New Collection of Ancients and Modern Poems)”, Spring poem, by…
敬語「侍り」 格助詞「の」 けしき 「に」の識別 係助詞「こそ」
This was read as a poem for the first day of spring. Amanotono akurukesikimo shizukanite kumoiyorikoso haruwa tatikere. (“Shintyokusensyuu”, Spring, by Fujiwara no Shunzei/male, 2, 12C ) 日本語(English) The theme is a poem of “the first da…