秋歌(Autumn)
板倉山のもとに、田にいねつむ、 いとたかし、人あり、これを見るあしびきのいたくら山の峰までに積める刈り穂を見るがうれしさ (江帥集・四尺屏風・359) 現代語訳 板倉山のふもとに、田に稲を積みあげているようすが とても高く描かれていて、人も描かれ…
幾秋を経て老いの身となるまで(あの月に)親しんできました。(私の人生に何があったかと聞かれれば)月より他の思い出はない(と言ってもよいほどに)。
暮秋十首歌たてまつりし時 心とめて草木の色もながめおかん面かげにだに秋や残ると (玉葉集・秋・京極為兼/男性・832・14世紀) 現代語訳 暮秋の十首歌を献上した時(に詠んだ歌) (木々は紅葉に黄葉に、野の草は色とりどりに秋を盛りと咲いている。この景…
あるじなき庭の千草の花盛りいかばかりかは秋は悲しき (現存和歌六帖・秋のはな・前大納言基良・447) 現代語訳 (家の)主がいなくなったこの庭の千草の花も(秋を迎えて今を)盛り(と咲き乱れている)。ああ、どれほど秋は悲しいことか。 内容解説 秋の…
秋萩の咲き散る野辺の夕露に濡れつつ来ませ夜はふけぬとも (万葉集・秋相聞・寄露・よみ人しらず・2252) 現代語訳 秋萩の咲き散る野辺の、(花や葉に置く)夕露に濡れながら私の家まで来てください。夜はふけて(暗くなって)しまったとしても。 内容解説 恋歌…
草木まで秋のあはれをしのべばや野にも山にも露こぼるらん (千載集・秋歌上・題しらず・慈円・263) 現代語訳 (人が秋のあはれに心動かされるのはあたりまえのことだけれども、心を持たないはずの)草木まで秋のせつなさに心を寄せているから、野にも山に…
ひとりゐて月を眺むる秋の夜はなにごとをかは思ひ残さん (千載集・雑上・具平親王・983) 現代語訳 ひとり座って月を眺める秋の夜のもの思いには、いったい何を思い残すことがあるでしょうか(いや、あらゆる物思いをし尽くしてなお飽き足らないまま秋の夜…
百首歌召しける時、月のうたとて詠ませ給うける石ばしる水のしら玉かず見えて清滝川にすめる月影 (千載集・秋歌上・藤原俊成・284) 現代語訳 百首歌を提出させなさった時、月の歌という歌題で お詠ませになった (歌)石の上を走り流れる水(の真珠のよう…
木のまより洩り来る月の影見れば心づくしの秋は来にけり (古今集・題しらず・よみ人しらず・184) 現代語訳 木々の枝葉からもれこぼれてくる(秋の)月の(玲瓏たる)光を目にすると、ああ今年も秋が、物思いの限りを尽くす秋が来たのだなあ(と思われる)…