雑歌
家づとに貝を拾ふと沖へよりよせくる浪に衣手ぬれぬ (風雅集・雑歌中・題しらず・読人しらず・一七一五) 現代語訳 おみやげに(と思って波打ち際の)貝を拾うとはるか遠くの海の沖から寄せてきた波に(わたしの)たもとが濡れました。 内容解説 春のゆくへ…
きのうのつづきなんですけれど、一言かけろよと言ってきた友人に返した歌です。連絡はしなかったけど友情はかわらないよ☆ みたいな返事。歌の内容については、いいです。このやりとりを歌でおこなったということが、現代には失われた人間関係の構築のしかた…
親しいお坊さんがですね、自分の住んでいるところのとなりに来ていて、何の用か知らないですけど、来ているのに自分に何も言ってこなかったんです。うーん、この、この微妙な距離感。いや、となりに来たお坊さんからすれば、別にその友達に用があって来たわ…
おねえちゃんばっかりずるい! まあ、あるよねえ。お姉さんはもう就職しているのです。「内に侍るむすめ」ですから内裏にお仕えしているエリート女性です。内裏にお仕えするというのは支度だけでもけっこうなお金がかかるもので、あの十二単衣がまず高価。持…
夕潮のさすにまかせてみなと江の葦間にうかぶあまのすて舟 (玉葉集・雑二・題しらず・藤原頼景・2104) 現代語訳 夕べの潮が満ちるにまかせて港の葦の間に浮かんでいる海士の捨て舟。 内容解説 夕べの海の情景です。おだやかな、静かな波間に夕方の光がみち…
朝の心を 起きて今朝また何事をいとなまんこの夜あけぬとからす鳴くなり (玉葉集・雑二・読人しらず・2141・14世紀) 現代語訳 「朝」という歌を(朝が来て)目が覚めて、今朝もまた(一日が始まったとて)いったい何をしようというのだろう。この夜も明け…
むかし、男、いかなりけることを思ひけるをりにかよめる。 思ふこと言はでぞただにやみぬべき我と等しき人しなければ (『伊勢物語』一二四段/ 引用元:新編日本古典文学全集 小学館) 現代語訳 むかし、ある男が、どんなことを思った時だったのだろうか、…
うつくしと思ひし妹を夢に見て起きてさぐるになきぞかなしき (拾遺集・哀傷歌・題しらず・よみ人しらず・1302) 現代語訳 (あなたが死んで、あれから幾日たったのでしょうか。誰よりも)愛したあなたを夢に見て、(あなたはまだそこにいたのかと目が覚めて…
としごろ沈みゐてよろづを思ひ嘆きてはべりけるころ 待つことのあるとや人の思ふらん心にもあらでながらふる身を (後拾遺集・雑三・藤原兼綱/男性・983) 現代語訳 長年落ちぶれて全てを思い嘆いておりましたころ(これほど絶望に満ちた人生を送っている私…
雨夜老人思といへる心を夜もすがら涙も雨もふりにけり多くの夢の昔語りに (続後撰集・雑歌下・大納言隆親・1206・13世紀) 現代語訳 雨の夜の老人の物思い、という主題を(雨の夜に、過ぎ去った過去のあれこれを思っていると、若かった頃のこと、亡くなった…