和歌ブログ [Japanese Waka]

国文系大学院生がひたすら和歌への愛を語る記録

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

冬の和歌 何もない一年でしたけれど、過ぎてゆくのは惜しいものです ― 思ひ出もなくて過ぎぬる年なれど今日の暮るるは惜しまるるかな

思ひ出もなくて過ぎぬる年なれど今日の暮るるは惜しまるるかな (田多民治集・としのくれ・藤原忠通・111) 現代語訳 (特別な)思い出もなくて過ぎてしまった一年だけれども、大晦日の今日が暮れ(てこの一年が今日で終わ)るのは惜しく思われるものだな。 …

冬の和歌 冬の夜に迷う ― 空や海月や氷とさよちどり雲より波にこゑ迷ふなり

空や海月や氷とさよちどり雲より波にこゑ迷ふなり (千五百番歌合・冬二・藤原忠良・1919) 現代語訳 あの空と見えるものは海なのだろうか。(あの空に浮かぶ)月と見えるものは(海に浮かぶ氷)なのだろうかと、夜の千鳥が雲から波に、(あわれな)声をさま…

恋の和歌 好きだけど、その人についてまだなにも知らない ― まだしらぬ人をはじめて恋ふるかな思ふ心よ道しるべせよ

その人について、まだ何もしらない。どんな人なのか、どうしたら会えるのか、わからない。好きだけれど、手がかりがない。手がかりがないけれど、あなたに伝えたくて、会いたくて、あなたが好きだというこの思いだけがあなたとわたしをつないでいる、という…

恋の和歌 心、恋、ばらばらに ― きみ恋ふる心は千々にくだくれどひとつもうせぬものにぞありける

あまりに好きで、好きで心が壊れそうで、壊れて散ってなくなってしまったら忘れられるかと思ったのに、ただのひとつもなくなってくれずにわたしを苦しめ続ける。 もう心はとうに壊れているのです。壊れてしまって、そのばらばらになった心のかけらをじっと見…

冬の和歌 わたしは泣いているのでしょうか ― 恋もせず物もおもはぬ袖のうへに涙をながすはつしぐれかな

つらい恋をしているわけでもない、苦しい悩みを抱えているわけでもない、泣く必要など心のどこを探してもないはずのわたしが時雨の空を見つめて、その時雨がまるで涙のように袖を濡らしている。なぜ涙に見えるのか、自分でもわからないのです。華やかに寂し…