和歌ブログ [Japanese Waka]

国文系大学院生がひたすら和歌への愛を語る記録

2017-01-01から1年間の記事一覧

秋の和歌 実りに感謝 ― あしびきのいたくら山の峰までに積める刈り穂を見るがうれしさ

板倉山のもとに、田にいねつむ、 いとたかし、人あり、これを見るあしびきのいたくら山の峰までに積める刈り穂を見るがうれしさ (江帥集・四尺屏風・359) 現代語訳 板倉山のふもとに、田に稲を積みあげているようすが とても高く描かれていて、人も描かれ…

夏の和歌 魂はどこへ ― うつせみの殻は木ごとにとどむれどたまのゆくへを見ぬぞかなしき

からはぎ空蝉の殻は木ごとにとどむれどたまのゆくへを見ぬぞかなしき (古今集・物名・読み人しらず・448・10世紀) 現代語訳 蝉のなきがらはその命を終えた木ごとに留まっているけれど、その魂のゆくえを見ることがないのは悲しいことだ。(あれほど力強く…

海の和歌 おみやげに貝殻を ― 家づとに貝を拾ふと沖へよりよせくる浪に衣手ぬれぬ

家づとに貝を拾ふと沖へよりよせくる浪に衣手ぬれぬ (風雅集・雑歌中・題しらず・読人しらず・一七一五) 現代語訳 おみやげに(と思って波打ち際の)貝を拾うとはるか遠くの海の沖から寄せてきた波に(わたしの)たもとが濡れました。 内容解説 春のゆくへ…

恋の和歌 心、恋、たったひとつ ― ふたつなき心は君におきつるをまたほどもなく恋しきやなぞ

本院の東の対の君にまかりかよひて、あしたに ふたつなき心は君におきつるをまたほどもなく恋しきやなぞ (拾遺集・恋二・大納言源きよかげ・721) 現代語訳 ふたつとない(私の)心は(あなたを愛するあまりに)あなたのもとに置いてきましたのに、(離れた…

恋の和歌 紅の花に染められたように、あなたを深く思っています ― 紅のはつ花染めの色ふかく思ひしこころ我忘れめや

くれなゐのはつ花染めの色ふかく思ひしこころ我忘れめや (古今集・恋歌四・題しらず・よみ人しらず・723) 現代語訳 紅花の、その紅色の初花で染めた色(のように心に)深く染められたこの恋を私が忘れることがあるでしょうか。(いいえ、忘れるはずがあり…