2015-01-01から1年間の記事一覧
百首歌たてまつりし時 今年また暮れぬと思へばいまさらに過ぎし月日の惜しくもあるかな (風雅集・冬歌・関白右大臣・896) 現代語訳 百首歌を献上したとき(詠みました歌)今年もまた暮れてゆくと思えば、今さらの事ながら、過ぎた一日一日が名残惜しく思わ…
消えかへり岩間にまよふ水の泡のしばし宿借るうす氷かな(新古今集・冬歌・題しらず・藤原良経・632・12世紀) 現代語訳 (川の流れに渦巻いて)生まれては消え、消えては生まれ、岩のあいだを行き迷う水の泡が、わずかひとときとどまる(氷さえもかすかに薄…
冬さむみ霜さゆる夜も明けぬれどあさぶすまこそぬがれざりけれ (永久百首・冬十二首・衾・顕仲・386) 現代語訳 冬の寒さのせいで霜が冴え冴えと冷える夜も(ようやく)明け(て、少しはあたたかくなっ)たけれど、朝のふとんを脱ぐなんてことは絶対にでき…
身をしればあはれとぞ思ふうづみ火のあるかなきかの暁のそら (公衡集・賦百字和歌七月九日午時以後三時詠之・うづみ火・69) 現代語訳 (炭火だけでなく、私の)身もまたはかないものと知っているから、(我が身に添えて)心にしみる。(一晩中燃やされて)…
つひにみな消えなむことを思ひしるあかつきがたのうづみ火のかげ (公衡集・賦百字和歌七月九日午時以後三時詠之・うづみ火・68) 現代語訳 (そうはいっても)最後には全て消えてしまうと思い知るのです。(この一晩をあたためてくれて朝を迎えた)明け方の…
うれしくも友となりつつうづみ火の明け行く空になほ残りける(公衡集・賦百字和歌七月九日午時以後三時詠之・うづみ火・67) 現代語訳 (冬の夜、)嬉しいことに、一晩中友だちとして寄り添っていた(炉火のわずかな)残り火が、(翌朝)ほのぼのと明けゆく…
暮秋十首歌たてまつりし時 心とめて草木の色もながめおかん面かげにだに秋や残ると (玉葉集・秋・京極為兼/男性・832・14世紀) 現代語訳 暮秋の十首歌を献上した時(に詠んだ歌) (木々は紅葉に黄葉に、野の草は色とりどりに秋を盛りと咲いている。この景…
うつくしと思ひし妹を夢に見て起きてさぐるになきぞかなしき (拾遺集・哀傷歌・題しらず・よみ人しらず・1302) 現代語訳 (あなたが死んで、あれから幾日たったのでしょうか。誰よりも)愛したあなたを夢に見て、(あなたはまだそこにいたのかと目が覚めて…
あるじなき庭の千草の花盛りいかばかりかは秋は悲しき (現存和歌六帖・秋のはな・前大納言基良・447) 現代語訳 (家の)主がいなくなったこの庭の千草の花も(秋を迎えて今を)盛り(と咲き乱れている)。ああ、どれほど秋は悲しいことか。 内容解説 秋の…
秋萩の咲き散る野辺の夕露に濡れつつ来ませ夜はふけぬとも (万葉集・秋相聞・寄露・よみ人しらず・2252) 現代語訳 秋萩の咲き散る野辺の、(花や葉に置く)夕露に濡れながら私の家まで来てください。夜はふけて(暗くなって)しまったとしても。 内容解説 恋歌…
草木まで秋のあはれをしのべばや野にも山にも露こぼるらん (千載集・秋歌上・題しらず・慈円・263) 現代語訳 (人が秋のあはれに心動かされるのはあたりまえのことだけれども、心を持たないはずの)草木まで秋のせつなさに心を寄せているから、野にも山に…
ひとりゐて月を眺むる秋の夜はなにごとをかは思ひ残さん (千載集・雑上・具平親王・983) 現代語訳 ひとり座って月を眺める秋の夜のもの思いには、いったい何を思い残すことがあるでしょうか(いや、あらゆる物思いをし尽くしてなお飽き足らないまま秋の夜…
としごろ沈みゐてよろづを思ひ嘆きてはべりけるころ 待つことのあるとや人の思ふらん心にもあらでながらふる身を (後拾遺集・雑三・藤原兼綱/男性・983) 現代語訳 長年落ちぶれて全てを思い嘆いておりましたころ(これほど絶望に満ちた人生を送っている私…
百首歌召しける時、月のうたとて詠ませ給うける石ばしる水のしら玉かず見えて清滝川にすめる月影 (千載集・秋歌上・藤原俊成・284) 現代語訳 百首歌を提出させなさった時、月の歌という歌題で お詠ませになった (歌)石の上を走り流れる水(の真珠のよう…
心地損なへりけるころ、あひ知りて侍りける人の訪はで 心地おこたりてのちとぶらへりければ、詠みてつかはしける 死出の山ふもとを見てぞ帰りにしつらき人よりまづ越えじとて (古今集・恋歌五・兵衛/女性・789・9世紀) 現代語訳 (私が)病気をしていたこ…
木のまより洩り来る月の影見れば心づくしの秋は来にけり (古今集・題しらず・よみ人しらず・184) 現代語訳 木々の枝葉からもれこぼれてくる(秋の)月の(玲瓏たる)光を目にすると、ああ今年も秋が、物思いの限りを尽くす秋が来たのだなあ(と思われる)…
みそぎする賀茂の河風吹くらしも涼みにゆかん妹をともなひ (好忠集・六月中・曽祢好忠/男性・174・10世紀) 現代語訳 六月祓をする賀茂の川風が(涼しく)吹いているようだ。涼みに行こう。妻といっしょに。 内容解説 前回と、前々回の続き。ごろごろだら…
入り日さしひぐらしのねを聞くからにまだきねぶたき夏の夕暮れ (好忠集・六月をはり・曽祢好忠/男性・161・10世紀) 現代語訳 (だらだら昼寝をしていたらいつのまにか)夕日が部屋に射しこむ時間になって、ひぐらしの声を聞いたらやっぱりまだねむたい(…
妹とわれ寝屋の風戸に昼寝して日たかき夏のかげをすぐさむ (好忠集・六月終はり・曽祢好忠/男性・178・10世紀) 現代語訳 (暑い日は)妻とわたしと寝室の(涼しい)風が通る戸の近くで昼寝をして、(だらだらと)日の高いあいだの夏の暑さをやりすごそう…
蝉の鳴く木末を分けて吹く風に夏を忘れて夏にこそあへ (他阿上人集・夏・他阿上人/男性・882・13世紀) 現代語訳 蝉が鳴く木々の梢をわけて吹き下ろす風の涼しさに、(思わず)夏の暑さを忘れて(涼んだと思ったけれど、そうではなくて、夏を忘れさせるこ…
さらぬだに光涼しき夏の夜の月を清水にやどしてぞみる (千載集・夏歌・題しらず・顕昭法師・213・12世紀) 現代語訳 ただでさえ(夜空にあるだけで)光涼しく見える夏の夜の月を冷たい清水に映して見る(時の、なんと清らかに澄みきった輝きだろう)。 内容…
夏草をよめる潮満てば野島が崎のさゆり葉に浪こす風の吹かぬ日ぞなき (千載集・雑・源俊頼/男性・1045・11世紀) 現代語訳 「夏草」という題で詠んだ(歌)(夏のあいだ中、)潮がみち(てくる時間にな)れば、野島が崎の(岸辺に揺れる)小百合の葉の上に…
永日すらながめて夏を過ぐすかな吹きくる風に身をまかせつつ (好忠集・六月はじめ・曽祢好忠/男性・163・10世紀) 英語(English) 現代語訳 (夏の)ながい一日でさえ(ただ空を)ながめて夏をすごしています。吹きくる風にただ身をまかせつつ。 内容解説 …
Nagabisura nagametenatuwo sugusukana fukikurukazeni miwomakasetsutsu. (Yoshitada Collection (also know as: Sotan (曾丹) Collection), an early June, Sone no Yoshitada / male, 163,10c) Japanese(日本語) Translation into modern Japanese I sp…
雨夜老人思といへる心を夜もすがら涙も雨もふりにけり多くの夢の昔語りに (続後撰集・雑歌下・大納言隆親・1206・13世紀) 現代語訳 雨の夜の老人の物思い、という主題を(雨の夜に、過ぎ去った過去のあれこれを思っていると、若かった頃のこと、亡くなった…
返死ぬ死ぬと聞く聞くだにもあひ見ねばいのちをいつの世にか残さん (後撰和歌集・恋三・源信明/男性・708・10世紀) 現代語訳 (中務の歌への)返歌(そうはおっしゃいますけど、)「死ぬ死ぬ」と(何度申し上げても)「はいはい何度も聞きました」と言う…
源さねあきら、たのむことなくは死ぬべしといへりければいたづらにたびたび死ぬといふめれば逢ふには何を替へんとすらん (後撰和歌集・恋三・中務/女性・707・10世紀) 現代語訳 源信明が、「(中務に)逢えないなら死にたい」と言ってきたので、(ふつう…
(今朝あなたと別れてからずっと)わびしさを(抱えて耐えかねていましたが、あなたもわたしと)同じ心(で今朝の別れをつらいと思っていらっしゃる)と聞いたために、我が身を捨ててもよいほどあなたがいとおしく思われることです。
をとこのもとにつかはしけるはかなくておなじ心になりにしを思ふがごとは思ふらんやぞ (後撰和歌集・恋一・中務/女性・594・10世紀) 現代語訳 (あなたが私をどれほど愛しているか)確かめないまま同じ心になってしまいましたものの、(私があなたを)愛…
朝影にあが身はなりぬ玉かぎるほのかに見えて去にし子ゆゑに (万葉集・巻第十一・正述心緒・2394・8世紀) 現代語訳 朝方の(薄く弱々しい)影のように、わたしの身は(やつれて細く)なってしまいました。ほのかに(私の目の前に)現れてそのまま去って行…